不妊治療を諦める

結婚したら子供を二人産んで、平凡ながらも明るく楽しい家庭を築きたい…などというのは、多くの女性が望むであろう極一般的な普通の夢だと思います。

それは一見簡単なことのように思いますし、周りを見渡してみても赤ちゃんを連れたお母さん、子供と遊んでいるお父さん、楽しげな家族の光景はそこかしこに溢れています。しかし、世の中には子供が欲しくても授かれない人たちも沢山いて、その中には不妊治療をしていたけれど、結果が伴わず諦めた人達というのも当然いるでしょう。

不妊治療をしたからといって必ず授かれる訳ではなく、また、自分で止めない限り不妊治療はずっと続きます(続ける事が出来ます)。「次は上手くいくかも知れない」と思うと止められない、どうしても子供が諦めきれない…。

しかし、どうやっても子供ができない場合、治療を辞めて「夫婦二人で今後の人生を生きていく」という選択は、どの時点でどうやって決めれば良いのでしょうか?不妊治療のやめ時と、子供の居ない老後について考えてみました。

妊活は女性だけの問題ではありません!男性の理解と協力が必要です。

不妊治療とは?どこまで続ける?

不妊治療は、もちろんやった事が無い人にはわからないでしょうが、辛く苦しく長い道のりとなる事が多いです。私自身、5年の不妊治療を経験しましたが、肉体的、精神的、金銭的な苦痛を感じ、何度も治療をやめることを考えました。

不妊治療は不妊の検査を受けて原因を探し、見つかればそれに対応した治療を受け、特に見つからなければタイミング療法からスタートするのが一般的です。私の場合、特に夫婦揃って原因は見つからなかったため、タイミング療法を始めましたが上手くいかず、人工授精、体外授精へとステップアップしていきました。

毎回の治療は、待ち時間は長く、痛みを伴い、診察台に乗るのが苦痛など、決して楽な事は無く、治療が続けば続くほど病院に向かう足は重くなる一方でした。

また、毎月生理が来るたびに気持ちは激しく落ち込み、努力が報われないことに苛立ち、焦り、悲しみました。それでも治療を続けたのは、子供を持つことを諦めきれなかったことと、将来「あの時もっと頑張っておけば良かった」と後悔したくなかったので、やれるところまでやってみようと思う気持ちだけでした。

不妊治療には年齢制限がなく、自分達が望む限り何歳まででも続けることができるのです。しかし年齢とともに妊娠率は落ちるため、治療が続けば続くほど、どんどん不利な状況になっていきます。制限がないために次のチャンスに希望を繋げ、治療を止められない、妊娠を諦めきれないといったループに陥ります。

不妊治療は治療が進むほど(ステップアップするほど)医療費は高額となります。ずっと継続して治療するとなると、体や精神はボロボロになり、高額な医療費は家計を圧迫し、そのせいで夫婦の仲も険悪なものになる可能性があります。

私達夫婦も散々話し合い、「いつまで治療を続けるのか」というのを、毎日考えていました。治療は止めたい、でも子でもは欲しい、しかし体はボロボロで金銭的余裕はない… こんな状況では誰も幸せになれないと思いませんか?話し合いの結果、私達は自分達の中で治療の年齢制限と、回数の制限を設けました(私達は私自身が38歳になるか、体外授精を5回までと制限しました)。制限を設ける事で良かったことは、治療に対して前向きになれた事と、あと何回しかしないのだから、と、それまで以上に体作りに注力できた事です。

考え方次第ではありますが、一度制限を設けて、制限内で上手くいかず治療を止めたとしても、自分達で納得が出来るなら期間をおいてまた再開しても良いのです。

ただ、治療を続けたからと言って必ず良い結果が待っている訳ではないことをきちんと理解し、まずは自分達の生活や夫婦関係を大事にする事を考えなければなりません。「子供の居ない人生」を選ぶのは勇気が要りますし、そう決断するのも容易なことではないでしょう。

しかし「子供を持つこと」だけが人生を豊かにする手段ではないことを知って、自分達に合った「治療の止め時」も必要だということを覚えておかなければなりません。

夫婦二人で生きていくという事

不妊治療を止め、夫婦二人で今後の人生を生きていくことを決めたならば、それまで治療のために我慢していたこと、子供がいたら出来ないことなど、大好きな趣味や自分たちのやりたいことを思う存分出来るようになります。

子供がいたらあーだった、こーだった、と、思う気持ちはもちろん沢山あるでしょう。しかし、子供が居ないからこそ出来ることも沢山あるのです。子供が居なければ、その子のためにと学資を準備する必要がありません。

子供一人を大学まで進学させようと思うと、必要な資金は1千万円を軽く超えてきます。しかし子供が居なければ、その分を夫婦二人で好きなことに使え、余裕を持って生活することも可能です。子供が出来ず悩んだり落ち込んだりする事は当然ありますが、子供が居ればこその苦労や悩みは、それ以上にあるかもしれません。

人生で一番長く一緒に生活するのは、親でも子でもなく、夫婦です。子供が居なければその分、夫婦の絆は強くなり、子供が居る時とはまた違った豊かな人生が送れるのではないないでしょうか。そう考えると、子供が居ない人生も悪いことだけでは無いと思えるのです。

子供の居ない老後について

子供が居ない事で考える事のひとつに、老後のことがあると思います。妻もしくは夫に先立たれてしまうと、独りぼっちになってしまうという心配もあるでしょう。

または老後の面倒を誰に見て貰えば良いのかと、不安に思う事もあるでしょう。そんな風に考えると、子供がいない事というのは人生においてデメリットのように感じます。

しかし、子供がいるからと言って皆が幸せな老後を過ごしている訳ではありません。将来は子供や孫と一緒に暮らしたい、と思っても住宅環境や夫婦関係を考えると同居は望めないことは良くある話です。

また、将来自分たちに介護が必要な状況になった場合、子供が面倒を見てくれる保証はなく、逆に子供たちに迷惑をかけたくないからと、自分たちから同居を拒んだりすることもあるかもしれません。そう考えると、「自分たちには子供が居るから安心」という風には思えないでしょう。子供が居ない夫婦だけの老後を考えれば、伴侶に先立たれることはとても悲しく辛いことです。

しかし、必ず一人になる時がくるのですから、一人でも安心して暮らしていけるような住居や資金の準備を前もってしておくことが必要です。子どもが居たとしても、自分たちの老後の生活資金の準備は大事なことですが、子供が居ない夫婦の方がその準備は簡単でしょう。

自分たちだけのために働き、自分たちだけのために準備すれば良いのですから。子供が居ることが普通であったり大多数であるがゆえに、望んでも得られない、授かれない苦しみは計り知れません。

しかし、不妊治療は絶対ではなく、そのために割いた大事な時間や費用は無駄になる事もあります。簡単なことではありませんが、自分の人生を豊かで大切なものにするためには、子供の居ない生活・老後を真剣に考え、条件や期限を設けて治療を受けることが大事なのではないでしょうか。